2011-08-26

[TRIP]猿島

三笠公園からフェリーで10分。
要塞の島「猿島」にもお邪魔してきました。
三笠甲板から見た猿島


猿島はなんだか無理やりBBQや海水浴のできるレジャースポットとして最近は売りだしているみたいだけど、少し奥に入るととっても静かで、お散歩し甲斐のある島です。
幕末からWWⅡ前までは、東京湾の首都防衛拠点として、台場や弾薬庫がつくられました。
全ての施設が岸壁を掘り込んで作られているそうで、外から攻めうる敵の船からは全くの無人島に見えるようになっているらしい。
道が入り組んでいて、木が生い茂っていて、確かに外界から遮断された感じがします。

弾薬庫など、なんかそれっぽい穴は全部封鎖されていて中には入れませんでした。
井戸と同じ様な構造になっていて、弾薬は真上に設置された砲台へ縦に運搬されたそう。

トンネルは真っ暗。
足元は湿っていて、壁にはよく見るとでっかい蜘蛛がたくさん。要塞っぽい!


調べてみると、どうやら猿島はショッカーのアジトとして仮面ライダーに登場しているらしい。
ゲルショッカー結成式が行われた展望台なんかもあったみたいだけど、知らなかったので思いっきりスル―してしまった。
仮面ライダーフリークにとっては行っとかなきゃ的なスポットみたい。


たくさんの技術や工夫が施されたこの要塞は、
関東大震災で石垣が崩れ、通路や兵舎が埋まってしまったり、
飛行機や長距離砲の技術が発達したことによって、結局実戦で使われることはなかったらしい。
砲台跡にそびえたつ太い樹木が、急速な時代の変化と、その変化に取り残されたこの島を象徴しているようですね。



要塞っていう響きがもうしびれるよね。
アルジェリアのムザブの谷に行きたくてたまらない。
谷間に出来た要塞都市ですよ。ロマンだなあ。

2011-08-25

[TRIP]戦艦三笠

2011.08.06


横須賀の三笠公園に保存してある戦艦三笠は、日露戦争の日本海海戦で司令官・東郷平八郎と共に、日本に歴史的勝利をもたらした鬼のようにかっこいい戦艦です。
今は資料館として残っているんだけど、甲板や展示室など見学できるところはたっぷり。
特に一番てっぺんの、東郷平八郎や秋山真之が立って指揮を執ったマスト下の甲板にはこんな印があって興奮します。


ロシアのバルチック艦隊を破った東郷平八郎、秋山真之のT字戦法はこの強固な戦艦三笠なくしては成り立たなかったとまで言われているそう。
この時代の軍艦は側面に多く砲台が並んでいるので、単縦陣で進行し、並列の陣形で砲撃し合う戦い方が主流だったらしい。
T字戦法とは、まっすぐ進む敵艦隊の進路を塞ぐよう直角に艦隊を配置し、砲撃する戦法。
縦に連なる敵艦隊の後続艦が遠くにいるうちに、こちらは全艦隊で砲撃できることから、この陣形につくことができれば圧倒的に有利な戦いになると言われていた。
ただ、相手もその対応陣形を熟知していたり、海戦では絶えず陣形が変化することから、実際にT字に入ることは不可能に近かったらしい。
それを可能にしたのが、かの有名な「トーゴーターン」!と、この戦艦「三笠」!なのです。

単縦陣で接近を図った両艦隊。
そのまま砲撃に入るかと思いきや、すれ違う寸前に思いっきり左に舵を切る三笠!
いきなり回頭した三笠に、バルチック艦隊は「トーゴーは気が狂ったのかと思った。勝利を確信した。」と話したそう。
直前で回頭するということは、敵艦隊に限りなく接近した状態にあるにもかかわらず、T字に入る間移動に注力することから、防衛体勢はとれないということ。
バルチック艦隊からすれば、打ち放題ということね。
リスクを負うことは分かっていたけれど、東郷と秋山は戦艦三笠の圧倒的に強固な艦体と、三笠に連なる俊足な味方戦艦たちを信じて、トーゴーターンに踏み切ったらしい。
全艦隊が回頭を完了するまで三笠は16発の砲弾を受けたそうな。
その間砲弾を浴び続けた三笠の甲板では、終始指揮を執る東郷平八郎の姿が確認されていて、この時点で亡くならなかったことが不思議だと言われているらしい。

こうしてT字に入ることに成功した日本軍は、約30分間の砲撃戦でバルチック艦隊戦艦の多くを沈めることに成功。
バルチック艦隊先頭にいたクニャージスヴォーロフは舵が故障し、北へ逃げるような形になった。
その回頭を逃げていると勘違いした東郷は、逃がすものかと第一艦隊を率いて後を追う。
これは、この海戦で東郷が下した唯一の誤った判断だった。
が、これが結果的に後の勝利につながっている。

「クニャージスヴォーロフを追え」という指令が出ていたが、これを第二艦隊の参謀・佐藤鉄太郎は舵の故障だと見破り、後続の戦艦たちに「我に続け」と指示を出し直し、バルチック艦隊本隊の逃亡を阻止。
東郷平八郎という絶対的な司令官の指示を、自らの目で判断し直し、最良な指令を出し直した佐藤鉄太郎なくしてこの勝利はなかったんだよ!
そして、その佐藤の判断を受け入れ、瞬時に指令を下した第二艦隊司令長・上村彦之丞の決断力と二人に信頼関係も素晴らしいね。

クニャージスヴォーロフの回頭が舵の故障だと気がついた東郷平八郎と第一艦隊は、バルチック艦隊本隊を捜索に戻る。
そこで、偶然バルチック艦隊本隊と鉢合わせ、東から追ってきた第二艦隊と思いがけず挟み撃ちする形になる!
なんと、図らずも別行動をとった東郷・秋山率いる第一艦隊と、上村・佐藤率いる第二艦隊それぞれの決断が、この決定的な陣形に自らを導いたってこと!
このときの艦隊運動を、ロシア軍は「日本の艦隊運動はまさに神のごとくであった」と語っているそうだよ。

こうしてそのあとも撃ち合ったりなんだりして、結果日本は最強のバルチック艦隊を沈めることに成功。
日本艦隊は秋山参謀、上村提督、佐藤参謀など適材が適所に配置され、それぞれが組織的に、有機的に、最善の決断を下すよう、よく教育されていたんだよね。
日露戦争の勝利は、この軍人たちと戦艦三笠なくしてはありえなかったということだ!感動!


だいぶはしょってダイジェストでお送りした日本海海戦ですが、わたしの曖昧な知識のつなぎ合わせで記述しているので、間違ってるところもたくさんあるかも。
でもこんなすごい人たちと、こんなすごい戦艦が戦って、勝利したということは事実です。
彼らの命を懸けた戦いに、ほんとうに心から感動したというわたしの気持ちが伝わればそれで良いです。
坂の上の雲を読み終わったら、もう一回三笠を観にいきたい!


Z旗「皇国ノ興廃、コノ一戦ニ在リ。各員一層奮励努力セヨ。」


2011-08-20

[EXHIBITION]今敏回顧展 千年の土産

2011.08.20@新宿眼科画廊
「今敏回顧展 千年の土産」












2011年8月24日、一周忌を迎える今敏監督の回顧展。
公開された映画の原画たちや、アニメーターとして活躍する前に描いていた漫画たち、学生時代の作品など、46年間に彼の脳みその中から溢れ出したイメージの欠片たち。

原画展がこんなにもわくわくするのは、あの映画たちが魔法のように突然現れたわけではなく、紙と鉛筆からスタートして、監督の意志と思いが命となって吹き込まれていったことがわかるから。
千年女優のイメージ画は、紙と鉛筆の時点で既に千代子が走り出しそうだ。
東京ゴッドファーザーズはゴミひとつすら丁寧に自らの手で描き上げてる。換気扇やゴミ袋、壊れたキーボードなど画に含まれる全てが、この作品に必要不可欠な要素であることがわかる。
イメージを自分の手で具現化し、制作できる監督は強い。

パーフェクトブルーは初監督作品だけあって、本当に時間をかけている。
コミックガイズ廃刊時に連載していた漫画OPUSの原稿に「正直アニメに集中できると思っちゃったし」的なことが書いてあった通り、本当に集中したんだろう。
DarrenAronovskyがパーフェクトブルーに強い影響を受けた事は有名な話らしい。
Requiem for a Dreamでは今敏へのオマージュとして、風呂場のシーンを真似て撮っているのだそう。
役に食われていく狂気という点ではBlackSwanにも多少影響を与えているのではないかと思う。
46歳という若さで亡くなった彼の作品が、海外でこんなにも高い評価を得ているのは不幸中の幸いというか。
天才は亡くなってから評価されることが多いけど、彼の場合は生前から多くの人に作品を観てもらう機会があって、愛されて、本当にそれだけは良かったと思う。

「夢みる機械」が公開に至ることを、心から願う。
MADHOUSEは今年の頭に日テレの子会社になってしまった。
経営的には随分と前からやばいと言われていたから、REDLINEを観たときによくぞここまでぶっとんだ作品を創ってて生き延びられてたなと思った。子会社化は必然だったんだと思う。
いま、「夢みる機械」の制作の進行度合いはあまり芳しくないらしい。
経営と制作内容のバランスを保つのは大変なことなのだろうけど、それでもこんなに愛されて、惜しまれて、本当に多くの人間が完成を望んでいる作品が、未完のまま葬られてしまうのは間違っていると思う。
「夢みる機械」が作品化されない日本のアニメ界に、未来はないと思うんだよ。
だってこの作品に公開の価値がないのなら、他のどの作品にそれがあるというわけ?と思ってしまう。
原画を見て、改めてこの作品を観てみたいと思った。

やはり、自分の大切にしたいものや人や才能には対価を払うべき。
文化はそういう風に思う一人ひとりの出資で守られていく。
いつも思ってはいるけど、こういう具体的なことがあるとそう強く感じる。

ということでやはり私は渡英前に千年女優を買おうと思う。
それは贅沢じゃなく、必要な出資ナノダ!


「夢みる機械」を劇場で観ることができるよう、心から祈る。
ありがとう、今敏!
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今敏回顧展 千年の土産
2011.08.12〜08.24
新宿眼科画廊 http://www.gankagarou.com/sche.html
http://www.gankagarou.com/sche/201108konsatoshi.html

読みたいと思った本:「ワールドアパートメントホラー」
※大友克人初実写監督作品を今敏が漫画化した作品
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4063132412/tamagomagogoh-22/ref=nosim/

気軽に観れちゃう今敏:「オハヨウ」 
http://www.youtube.com/watch?v=nLQmfAak4VM

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2011-08-18

[FILM]Whatever works

2011.08.14
「Whatever works」













やーーー久々に映画観ながらこんなにケラケラ笑った!
全く飽きない90分。アイロニックにこちらに向かって話しかけてくるLarry Davidがたまらなくおかしい。ブラックユーモア満載。
タリバンも共産主義者もひどい言われようだけど、どちらもきっとこれを観たら笑ってしまう。
天才!Woody Allen!軽すぎる!

一応老人と小娘のラブコメで、一瞬すごく切なくなったりして、そっちに振るのか?と思いきや、絶妙なタイミングでコメディに戻してくる。
Larryは二度も自殺しちゃうし、ゲイだのなんだのって色々大変そうなのに、とにかく軽い!
なんとなく全体の流れは思い出せるけど、細かい部分とかはあんま思い出せない。きっともう一回観たくなっちゃう。
天才。WoodyAllenは天才。誰にでもオススメできます。

気になるのはWhatever works→人生万歳?っていうタイトル。
なにがあってもうまくいくぜどうにかなるぜっていうニュアンスが伝わりきるのか?私的にはどーにかしちゃおうぜっていう力技なニュアンスも含む気がするし。
人生万歳!がWhatever works!みたいにうまく人の心をキャッチできてるといいけど。

しかし、旅立ち前の私は今まさにWhatever works!って気持ちで、
もっというと
思いわずらうことなく愉しく生きよ!Whatever works!ってかんじだ。

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Whatever works
director:WOODY ALLEN
writer:WOODY ALLEN
cast:Larry David-Boris, Evan Rachel Wood-Melody
country:USA/France
http://jinsei-banzai.com/pc/

観たいと思った映画:「Annie Hall」※脚本はこの時代に書かれたものらしいです。
http://www.imdb.com/title/tt0075686/
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[BOOK]思いわずらうことなく愉しく生きよ

2011.08.10
「思いわずらうことなく愉しく生きよ」













育子の愛や人生について、ひたすら文字に起こしながら考察するところ。
治子のいちいち大きなリアクションや、一度こうだと思ったら自分自身すらも言いくるめてしまうところ。
麻子の心の弱さと、紙一重の強さ。

女性であれば3人の誰かしらに共感し、さらには全員のなにかしらの要素を自分も持ち合わせているように感じてしまう人も少なくはないんじゃないかな。
江國香織の、やたらとなんでもたらたら形容するところは全然好きになれないけど、女性の描き方の多様性はすごいね。
本を読んでいて自分の男性的な感情が多く引き出されているとき、私はあくまでも第三者として物語に引き込まれて、興奮したり、共感したりしている。
そしてだいたいの本は、まあもちろん自分の好みによる偏ったチョイスは大きな要因だと思うけど、男性的な目で読み進めることが多い。
江國香織の本は、読んでいると自分の女性的な面が多く引き出されていく感じがして落ち着かない。早く読み終わりたいと思う。
なんだか自分自身のことがたらたらと綴られ、公開されている気がして、恥ずかしくなってくる。
それが面白い理由でもあるのかもしれないけど。
三姉妹と家族の話っていうプロットが良かったのかもしれない。
少し忙しい気もするけど、視点が変わることによって気恥ずかしさが軽減されて、一人ひとりのお話というより、家族間のつながりみたいなところに気持ちが向く。

ブランのねえさんたちのお話を聞いてると、読んだことないけど彼女のエッセイは私も耐えられないだろうなと思う。
同じ人の書くものでも、どの作品のどの部分を好きになるかはわからないね。
キャラクターとやっぱりたらたらと形容する文章は好きじゃないけど、「冷静と情熱のあいだ」のイタリアの描写や順正の修復士という仕事、そして帰国子女のアイデンティティクライシス的な気持ちの書き方はすごく好きだし。

ただ映画は二時間で終わるから失敗できるけど、本は長い時間かけて読み進めなければいけないからさ、慎重に選びたくもなるよね。
これからも江國香織を読むかっつーのは微妙なところ。
でもただ、「思いわずらうことなく愉しく生きよ」っていうのは素晴らしい家訓であり、本のタイトルだね!

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思いわずらうことなく愉しく生きよ
writer:江國香織
country:Japan
http://www.amazon.co.jp/思いわずらうことなく愉しく生きよ-江國-香織/dp/4334924352
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2011-08-13

[MUSICAL]A CHORUS LINE

2011.08.04@赤坂ACTシアター
「A Chorus Line」

久々の生モノ!broadway musical!
去年劇団四季のA Chorus Line観たけど、これだけ音楽や台詞に慣れ親しんでしまっていると、もう日本語では気持ち悪くて消化できないって感じでした。
そしてこれだけ慣れ親しんでいるものだからこそ、broadway musicalにはもっとずっと期待を上回ってほしかったなというのが正直な感想。
今回はやや下回りくらい。
歌もダンスも特別大好き!みたいな人がいなかったのが残念。
映画でも舞台でも、私はシーラがいつも一番好きなんだけど、イマイチ。
強気だけど哀愁のある感じが好きなのに、なんか笑いの要素が多すぎて。
最後のシーンとかもっときゅーんとなるはずなのに。

A Chorus Lineを初めて観たのは映画で、高校1年生の時。
ダンスを始めた頃で、やる気に満ち溢れていて、映画を観てキラキラ興奮したのを覚えてます。
サントラをMP3に入れて、ひろみんに振りを入れてもらって、通学電車に乗りながら、何度も頭の中で踊ってた。
とにかくこの頃の自分にはパワーがあって、挑戦し続けるダンサーたちと自分をシンクロさせてた部分もあったと思う。














every little stepはA Chorus Lineのドキュメンタリー。
broadway musical 「A Chorus Line」に出演するためのオーディションの様子を追った、なんだか入れ子構造のようにもみえる映画。
これを観たのは専門1年の時。
クリエイティブからどんどん遠のいて、生活するのに精一杯になっていく自分を励ましてくれたのがこの映画でした。
いくつものオーディションを落ちて、それでも挑み続けるダンサーたちの姿を見て、本当に勇気づけられたのを覚えてる。
自分も、この世界にしがみついていかなきゃとも強く思った。
ここから就活と平行して、NAAMの企画を始める。











A Chorus Lineは、なんだか偶然だけどいつも人生の頑張り時に観ている作品。
今回このbroadway musicalを観て、私はロンドンへ旅立つ。
この先の人生で、私はあと何回これを観ることになるんだろう。
大切な作品なので、次は、というか何度でも期待以上のものを観たいと思ってしまう。

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A Chorus Line
director:Michael Bennett
music:Marvin Hamlisch
http://www.tbs.co.jp/act/event/chorusline2011/
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2011-08-12

[FILM]elephant

2011.07.30
「elephant」

2:37/Murali K Thalluriを観た。
19歳の監督が撮ったこの映画は、視点の転換や時間の交錯などの表現方法がelephantによく似ていて、とても刹那的で、言葉がトゲのように刺さってくる感じがした。
学校で事件が起こるまでの一日の流れを、登場人物の視点を変えながら追っていくという構成は全く同じ。
同じ時間、別の人物はどこで何をしていたか?というように視点となる人物がかわると、時間軸を戻してみせたり、カメラの位置を変えてみたりと、シーンの展開方法もとても似ている。
似ている点は本当にたくさんあるのに、作品が終わった時の印象の違いはなんだろう。

elephantには説明がない。
観る人によっては唐突だったり、物足りなく感じたりすると思う。
10代の孤独や、漠然とした不安を言葉ではなく、画で表現している。
深い空に流れる暗い雲だったり、広いグラウンドに佇む少女の姿だったり。また、全体を通して学校に人が少ないイメージもある。
事件は突然起こり、理由の説明もないまま終わる。
衝撃で息を止めたまま、エンドロールに入る。
たしか初めて観たのは高校生の時で、わーーーーーーお。と思ってるうちに終わった。
私たちは、彼らの思いや孤独を、想像するしかない。
一つひとつの画や、決して説明的ではない彼らの台詞たちを少しずつ思い起こし、気持ちの整理をしていく。
elephantに限らず、この過程が私はとても好きだと思う。
世界に呑み込まれて興奮した心を、ゆっくりと沈めて映画を消化していく時間は、その映画を自分のモノにしていっている感じがある。
五感を使う映画だったと思う。

2:37の対照的な点は、本編の合間に人物一人ひとりのインタビューを挟みながら、丁寧に言葉で語らせているところ。
素直に話せなかったり、自分でも抱えているこの気持ちがなんなのかわからなかったり、言葉にする事がとにかく苦手な10代の心を、深く理解して、多くの人の心に届きやすいよう、映像化されていると思う。
そしてそれは19歳であり、同じように同級生を亡くしたムラーリにしかできない、とてもシンプルだけど実は一番難しい表現だったんじゃないかと思う。
終わった時のすっきり感は圧倒的にムラーリだった。


作品はどちらも素晴らしかったです。
10代の頃の自分てとても不安定で、人生の事とか死の事とかなんとなくいつも考えていて、
天井がとっても高く思える夜があったり、このまま目的地を通り過ぎてどこかへ行ってしまいたいと思う朝が何度もあったり。
まだ大切な人を大切にできる程、自分に余裕もない。
そんな毎日の積み重ねで、大事件があったわけじゃないけど少しずつ変わって、いつの間にかここまで辿り着いてた。

どんな風に形にできるかはわからないけど、
あの頃のあの感じをこのまま忘れてしまうのは惜しすぎるよね。

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Elephant
director:Gus Van Sant
writer:Gus Van Sant
country:United States
http://www.imdb.com/title/tt0363589/

2:37
director:Murali K Thalluri
writer:Murali K Thalluri
country:Australia
http://www.cinematopics.com/cinema/works/output2.php?oid=7630
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2011-08-09

[FILM] l'illusionniste

2011.07.28@目黒シネマ
「L'illusionniste」













映画のことももちろん書いていきたいとは思ってるのです。

昔映画館で働いていた頃は月30本の勢いで観てました。
今は月10本くらい。
タダで観られてた時代はもちろん良かったけど、
映画館で映画を観る特別な感じを取り戻せた事はとても良かったです。
わざわざ外出して、¥1800かけて映画館で映画を観るのはそれだけで特別なこと。
少しずつ暗くなっていく感じとか、心臓まで響く音、なにより偶然居合わせたお客さんによる劇場の一体感とかは映画館特有だと思う。大好き。

で、「イリュージョニスト」です。
昔すごく好きだった人が「Once~ダブリンの街角で」を"宝石箱のような映画"と言っていて、私はその表現がとっても好きだったんだけど、「イリュージョニスト」はその"宝石箱のような映画"にとっても近かったと思います。
なんの前知識もなく観た私でさえも、時代の移り変わりをただただ静かに眺めるタチの姿が、映画自体をとても繊細なものにしていて、切なすぎてきゅーーーん…となりました。
雰囲気のある無声映画を観ている気分でした。
実際セリフはほとんどないの。言葉の通じない二人のおはなしだからね。
アニメーションでこんな気持ちになれるなんて。

「イリュージョニスト」は故ジャック・タチの残した脚本を、フランスのアニメーション監督シルヴァン・ショメが制作したもの。
本作は彼らの思いや、制作に至る経緯も含めて初めて一つの作品になるように思える。
前作「ベルヴィル・ランデヴー」を制作中だったショメは、映画内でタチの「新のんき大将」の映像を使用する許可を得るため、亡くなったタチの娘ソフィア・タチに会いに行く。
「ベルヴィル・ランデヴー」をとても気に入ったソフィアは、半世紀の間フランス国立映画センターで眠り続けていた父ジャック・タチの映画化されていない脚本「イリュージョニスト」の監督をショメに依頼する。

イリュージョニスト・タチシェフのモデルは脚本家のタチ自身だそう。自伝に近いらしい。
パントマイム師として、脚本家や監督として、生粋の舞台人として生きたタチ。
古典的で使い古された彼の芸が、時代の移り変わりに置いていかれるショウビズと共に風化して、衰退していく様子は本当に切ない。
生前タチがこの脚本を映画化しなかった理由は、あまりにも自身に似ていたから、という事みたい。
そしてソフィアも、父の役を特定の役者に演じられることに抵抗があり、この名作は陽の目を見ることないまま眠り続けた。
ショメのアニメーションという表現方法は、二人の思いを裏切る事なく、特定のイメージに侵されることなく、タチを描く事に成功したんだよね。
絵画を見ているような終始フィックスの引きの画は、タチの人生を象徴する舞台のイメージ。
キャラクターのコミカルなアニメーションは、パントマイムの要素が取り入れられてるのかな。
最後の方のシーンでタチが映画館に入るんだけど、そこで目にするのは「ぼくの伯父さん」という映画で主人公を演じる生前のタチシェフらしい。
作品の世界観を壊すどころか、切なさを助長するような形で随所にショメの、タチシェフへの愛が込められている映画だった。

なんというか、この監督の手にこの脚本が委ねられるのは、運命だったんだと思う。
こんな風に巡り巡って人やモノに出会って、ひとつの作品が完成するなんて、素敵すぎる。
そして全ての作品にはこういったバックグラウンドがあるって事が、何より愛おしいね。
これから先、こんな風に作品をつくる事ができたらいいな。と思います。

そしてもちろん、こんな色んな要素を気にしなくてもアニメーション映画として、誰でも楽しめると思います。
画が本当に綺麗だし、キャラクターもとってもかわいい!うさぎ最高!
そしてそして、ほんとにほんとに切ない。観るなら夜をオススメします。
終わり。

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L'illusionniste
director:SYLVAIN CHOMET
writer:JACQUES TATI
music:SYLVAIN CHOMET(!) ※サントラすごくいいです。
country:France
http://illusionist.jp/

観たいと思った映画:「ベルヴィル・ランデヴー」
http://www.cinematopics.com/cinema/works/output2.php?oid=4892
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追記。
まだ模索中ですが、映画のレビューブログではないのであらすじのご紹介とか評価とかはしなくていいかなーと思っています。
なので本当に唐突だったり、一方的な思いがダラダラと綴られる事もたくさんあると思いますが、んーと、ごめんなさい笑。
まあとにかく適当に細々と長々とやっていきまーす。ヨロシク:)

2011-08-01

[TRIP]TAIWAN

ロンドンつっといていきなり台湾の話です。
先日妥協してミクシィにあげていた台湾日記をこっちにうつします。
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三連休は台湾旅行にいってきました。 
私にとっては初アジア旅行で、新しいものもたくさんで、とっても興奮したので忘れないうちに記録します。 
日記なんて久しぶりすぎてどう書いていいやらですが、とりあえず脈絡なく書き綴ります。 
ちなみにほんとはブログを立ち上げてそっちに書きたいんだけど、どのブログがいいかわかんなくて妥協してミクシイです。 
オススメあったら教えてほしー! 



まず、総じてやはり親日。 
でも想像してたほど親日ではなかったような。というのも、若者からの親日的アピールはそんなになかった気がします。 
おじいちゃんおばあちゃんはとっても親日。
日本語上手な方もたくさんいた。 
おかあさん世代は日本語はしゃべれないものの、良くしてくれる方が多かった印象。 
どこかのアンケートを見たら、10代~20代の親日率はおばあちゃん世代と比べてそんなに大差なかったと思うんだけど、親日の種類が違うんだろうね。 
日本ブランドの化粧品や食品、AKBのラッピング広告や日本の雑誌など、台北は特にここ日本か?って思っちゃうくらい日本産のものが多かった。

若者はおそらくこういう文化的なものに関心を抱いている「親日」。 
だから日本人自体には特に興味ないし、北京語しゃべれない私たちを小馬鹿にした感じの子も結構いた気がする。 
それに対して、おばあちゃんは「日本の人ですか?あそびにきたのですか?わたしニホンゴワスレタヨー!」と日本語で話しかけてくる。 
年配の方々は、歴史を踏まえた上で感謝と愛を抱いてくれている「親日」。 
総統府の案内係の人や、台北101タワーの受付の人、夜市の屋台の人たちなど、いわゆる観光スポット的なところにいる人たちは少し若めでも日本語で話しかけてくる人が多かった。 
日本語が勉強しやすい環境であることは確かなんだろうね。 
というか、英語がしゃべれなさすぎてびびった。 
日本人レベルの英語も通じる事はほとんどなかった。 
ステーション?バス?ハウマッチ? などなど。 
いままで行った国で一番英語通じなかったかも。 
万国共通なのはジェスチャーだけですね。 
最終日の朝5時起きで参加した公園の太極拳は、とってもかわいいおばあちゃんたちがたくさんでこの旅で一番楽しかったなんっ 












総統府の資料施設では、明らかに分量が多い日本統治時代の資料をたくさん見た。 
案内係のおじさんは、 
「たくさんの国に支配、統治されてきましたが、日本の時代が一番良かった。日本に感謝しています。ありがとう。」
と言っていた。多分心から言っていた。説明はもちろん日本語。
ちなみに後ろのグループは中国人のグループだった。おそらく大陸の。 
彼らにも同じように、「日本の時代が一番良かった」と説明するのだろうか? 
総統たちのお洋服を見たけど、陳水扁元総統も日常的に防弾チョッキが入ったジャケットを着ていたらしい。 
今でもいつ大陸が襲ってくるかわからないと思いながら生活しているのか。同じ国の人間に殺されるかもしれないというのは、どんな気分なんだろーね。



一日目の夜は台北EYEという小さなホールで京劇を観た。
前半が阿美族の民族舞踊、後半は八仙過海というお話のショーでした。










舞踊の方は最後観客も前に出て一緒に踊れたり、途中休憩時間では演者の方々と写真撮れたり、アットホームなエンターテインメントって感じでした。

筋肉質な男の子たちが手を交差してつないで踊るんだけど、白鳥の湖のパ・ド・カトルとおんなじ手してるの。どっちの振りが先なんだろう笑。
時も国もこんなに離れたところで同じ振りが生まれるなんて笑。
しかも見え方が全然違う。当たり前だけど。
阿美族の方はどっちかというと野球部の筋トレっぽい感じ。
観客もおそらく北京語話せない人がほとんどだったけど、円になって踊ればみんなおんなじ。ダンスって世界共通!
ちなみに阿美族は女性の方が優遇されていて、結婚しても女性の姓が残るんだって。
八仙過海のほうは雑技団みたいな技を見せながらお話が進んでいって、とっても楽しかった。
お化粧がとっても綺麗。都度見せるキメ顔が癖になる。ばいーん!




食事に関しては、香草系が苦手でなければ日本人向き。
中華のさっぱりバージョンて感じで、何頼んでも外れなかった。
メニューに写真がついていない事が多いので、漢字から想像するしかない。


麺が何種類もあって、うどんぽいの・そばっぽいの・ビーフンぽいのとか同じスープでも麺がかわるだけで味がかわっておいしかった。 
片桐はいり推奨のフルーツてんこもりかき氷が食べられなくて残念。 
小籠包は5つ星のおいし~~ところで食べた☆ 
本当においしい小籠包は、何もつけないでそのままいける! 

九フェンではおいしいお茶やさんにいった。 
おねえさんが一通り目の前で茶法を見せてくれて、あとは自分たちでも入れられる。


ちいさめの湯のみと細長い湯のみがあって、まず細長い湯のみに注ぐ。 
上からちいさい湯のみをかぶせて、くるっとひっくり返す。
まわしながら細長い湯のみをとって、残った香りを楽しみつつ、ちいさい湯のみに注がれたお茶を飲む。
細長い湯のみはこすると香りが変化するのがまた面白い!
お茶の種類もとっても豊富。
お店では梨山という台湾人気ナンバーワンのお茶を飲んだ。香りが素敵。
おみやげには凍頂烏龍茶。他にも色々試してみたかったなー。
ちなみに九フェンは千と千尋の神隠しのモデルになった街で、ずらーっと並ぶ提灯がとても綺麗でした。街自体は階段と坂がたくさんあって、江ノ島みたいだった。
いろんなお店が「ミヤザキハヤオキタヨ!」とアピールしていた。 


夜市は士林にいった。 
余談だけど、私たちは6人だったのでタクシー移動は3人ずつだったのね。このときも士林駅で待ち合わせしたんだけど、駅のどこでっていうのを決めてなくて、会えなくて超焦った。携帯使えないってコワイヨ! 
ちろみちゃんが迎えにきてくれて、再会したときはめっちゃテンションあがって阿美族ダンスを踊りたい気分だった。海外での待ち合わせはご注意! 
夜市では、というか街を歩けばどこにでも屋台が出ているのが臭豆腐。 
名前の通り、超臭い。 
本当に臭い。しかも、なんとなく知っている臭さなの。 
なにこの臭い!?って感じじゃなくて、満員電車のおっさんの口臭みたいな。 
これだけは絶対食えないと思ったね。そして本当にどこにでもある。 
どこまでも追いかけてくる台湾の臭豆腐。恐怖。 
夜市はめっちゃ楽しかったす。 










*

台湾のトイレはトイレットペーパーを流しちゃいけない。

各トイレにゴミ箱がついていて、使用済ペーパーがたまっている。
ペーパー自体も固くて流れづらいし、水圧が弱いので下手したらうんちも流れません。
なんだけど、めちゃくちゃ異臭を放ちそうなそのゴミ箱が、一切臭わない。ゴミ袋なのか?箱なのか?
どこに秘密があるのかはわからないけど、台湾の消臭技術はすごい。
そこかよって感じだけど、ほんとすごい。
私的にはこの消臭技術と、臭豆腐と、お茶の作法が共存する台湾が信じられない。
ゆーたちどんな鼻してるんだい。 


世界4大博物館の故宮博物院はシーズンなのか、鬼混み。
入場制限がかかっていて、ディズニーランドみたいだった。
ツアーのガイドさんが至るところでぴーぴー説明していたり、音声ガイドを聞きながらみんな歩いていた。
こんなにうるさい博物館初めてだった。
翡翠の白菜と角煮が有名で、モナリザレベルで人を招集していた。
古い書物や文字の起源を紹介した展示、水墨画などがとっても素敵だった。 説明書きは英語と中国語だったので、悠策と力を合わせて解読しながら進みました。
たしかに一生かかっても見切れない量の展示物だった。お腹いっぱい。 


台湾ではメトロ、バス、タクシーなどなど街の乗り物は網羅した感あり。
メトロは悠遊カードというスイカみたいなぴって入るカードを駆使しました。
びっくりなのは、残高が足りなくなるとマイナス表示になるけど通れるの。 借金してるって事かしら?
–6元台湾に借金して帰国しちゃいました。許してちょ。 
切符は人生ゲームとかに使われそうなちゃっちいコインなんだけど、まさかそれにも磁気が入っていて、ぴってするの。 
降りるときに回収。なんてエコ! 
バスは次のバス停のアナウンスとかがないから、その近辺の地理を把握していないと降りたいところで降りれない。 
私たちは1回降りたかったところを通り過ぎ、1回フライイングして降りそうになりました。 
タクシーは鬼安。まあ物価が安いから当たり前なんだけど。 
九フェンから台北まで約45分乗って3000円くらい。 
それも、TAXI張りの超ハイスピード。運転は超荒い。日本なら同じ距離あと30分はかかると思う。 
がんがん割り込んでくるし、信号も結構無視。名古屋がひどくなったみたいな感じ。 
ガイドさんも歩行者よりも車両が優先ですと言っていた。 
言葉通り、ちんたら信号渡ってると轢かれそうになる。 
あと原チャの数が半端ない。多分経済事情関係なく、みんな持ってる。 
二人乗りは基本。最大で4人乗りしてる家族を見た。 
おそらくフィットとかのノリでファミリーカーが原チャなんだと思う。 
それにしてもほんと原チャばっか。そしてみんなカッパを常備しているのがうける。 
用意周到。突然雨が降ると、おもむろにみんなカッパを着始める。 
きっとこの国では原チャを持ってないと馬鹿にされ、カッパを用意していないと彼女ができないのだと思う。 



鶯歌という陶器の街にもいった。 
所狭しとひたすら陶器屋が連なっている素敵な街。
わたしはここで素敵なおばちゃんと出会い、3000円くらい割引してもらって、素敵なお茶セットを購入♡ 
ちなみに今そのお茶セットでお茶飲みながらこれ書いてます。んまひー。

ここで食べた炊き込みご飯の器は、陶器を焼く窯の煙突をイメージしているらしい。 
ごはんもおいしかったし、よい陶器に出会えて幸せ。 

この街で初めて檳榔を食す。 
ドラッグとまではいかないけど、タバコに近い依存性があります。 
無味無臭。葉っぱに包まれた固い実。おいしくはない。 
ずっとくちゃくちゃ噛んでると若干の興奮と酩酊感がある。暑さもあったかもしれないけど、ちょっとふらふらした。 
昔は高級な嗜好品だったらしい。いまは結構どこにでもある。ていうか今も風習が残っているんだよね。 
結構吐き出したあとが色んなところにあった。一応規制はされているらしいけど。 










右の写真はハイになったわけじゃなく、前日に京劇を観たからなにかとポーズをとりたがっているだけです。 


中正記念堂では衛兵交代が見られた。
瞬き一つしない衛兵の人たちがすごく威圧的な音をたてながら交代。
銃で床をついたり、ブーツの音がかつかついってたり。
次第に人が集まってきて、後ろからは衛兵が見えなくなった。
蒋介石のおっきい銅像だけが見えて、衛兵のたてる音が蒋介石に威圧されているみたいで、恐怖を植え付けられいく感じがした。
それにしても銅像も、各所で売っている蒋介石グッズもめっちゃ笑顔のおじさんて感じ。
国をあげて彼をヒーローにしたいのか。逆に怖いんだけど。
総統府でみた李登輝さんの笑顔の方が何百倍も素敵に見えたよ。 




そんなこんなで、本当にまとまりがありませんが、竜一のパスポート間違いから始まった私たちの台湾旅行は終わりました。 
6人で行って、6人で帰ってこられて本当に良かったです。












台湾という国は、本当に奥が深い。

次は台南の方とか、花蓮や太魯閣にも行ってみたいなー。
地理的なことだけでなく、多くの国が台湾に興味をもち、台湾を統治したがった理由がなんとなくわかります。
今回の震災で台湾は日本に200億もの義援金を送ってくれているのに、日本は台湾を国として認知せず、しっかりとしたお礼もできてません。
こんなに無条件に愛を注いでくれる国があるのかしら。
せめて、一国民として私たちが感謝の気持ちを持って、台湾という国と対峙しなければいけないと思うのです。


と、まじめな感じに終わります。
たのしかったー!ビバ台湾!