2012-04-17

Terracotta Far East Film Festival 2012


とんとんとんとんとーーーーん!
と音が聞こえるくらいの急展開で参加することになったTerracotta Far East Film Festival。
刺激的すぎる、終始細胞が活性化しているような4日間でした。

Photo by Claire

ただのオーディエンスとして楽しみにしてたこの映画祭でしたが、突然の電話でビデオグラファーのお手伝いをすることになり、ロンドンにアジア映画を届けようと熱い活動を繰り広げるスタッフの方々と素敵な4日間を過ごすことができました。
ロンドンで豊田利晃と園子温が観られるなんて!
まだまだ小さいですが、ここにもマーケットは存在してるのです。
そしてそのマーケットを拡大しようと、ただただアジア映画が好きだ!という想いだけで活動しているイギリス人、アジア人がいます。日本人はいませんでした笑。
この映画祭はにちようび、華やかにその4年目を終えました。


16本のアジア映画、4人のゲスト、3つのマスタークラス、そして監督・役者・スタッフ・オーディエンスが混ざった自由なパーティー!
4年目のフェスティバルとは思えないくらい盛りだくさんなプログラム。
日本からは豊田利晃監督とでんでんさんがゲストとしていらっしゃいました。
ロンドンに来て半年になりますが、学校に映画の趣味が合う子は特にいないし、ましてや邦画を観ている子なんて会ったことなくて。ましてやましてや豊田利晃や園子温を知ってる子なんて。こんな風にイギリス人とアジア映画について話す日が来るなんて期待していなかったので、とにかく嬉しかった。
ロンドンの他の映画祭がどんな感じなのかはわかりませんが、この映画祭は本当に監督・役者・スタッフ・オーディエンスの距離が近い!という印象です。
パーティーではみんなでんでんと写真撮ったりしてました。

Photo by Yabukisan

わたしは中学生の頃に「青い春」を観て以来大好きな豊田さん会えて話せただけで、もうロンドン来てよかったーー!って感じでした笑。
映画祭3日目という体力的にピークな夜でしたが、誘ってもらって飲みにいってへろへろ!正直眠すぎてあんま覚えてませんが笑、幸せだったことだけ覚えてます。
一緒に飲みに連れてってもらった日本人の役者さんたち、フェスティバルプロデューサーさん、どう見ても麻原彰晃にしか見えないチャイニーズのガーフマンもとても愉快な方々で、最高な夜でした。

豊田さんとぱちり!

ガーフマン笑。でんでんさんが彼の顔をとても気に入って、描いた似顔絵が左のやつ。


映画は5本観ました。
中国映画や韓国映画に対するハードルが低くなったのもこの映画祭のおかげです。

My Way
director: Kang Je-kyu
casts: Joe Odagiri, Jang Dong-gun
country: South Korea

ひたすらオダギリジョーがかっこいいだけ!

One Mile Above
director: Du Jiayi
casts: Bryan Chang
country: China

雄大な自然が美しい。中国版Motor Cycle Diariesという感じ。

UFO in Her Eyes
director: Guo Xiaolu
casts: Shi Ke, Udo Kier
country: China

これ!期待してなかった分とても良かった。

Inseparable
director: Dayyan Eng
casts: Daniel Wu, Kevin Spacey
country: China

テンポの良い映画。ディテールが良いという印象。

HIMIZU
director: Sion Sono
casts: Shota Sometani, Fumi Nikaido, Denden
country: Japan

言葉が見つからない。そのうち別でブログ書きます。


こうして見ると中国映画が多かったのか。
というかお手伝いが決まる前からチケット予約して、一人で観に行く気満々で楽しみにしていた豊田監督のモンスターズクラブがまさかの豊田監督インタビュー撮影のせいで観られなかった笑。


Monster's Club
director: Toshiaki Toyoda
casts: Eita, Yosuke Kubozuka, Pyuupiru
country: Japan
日本では今週末公開です。観たい!


ヒミズについてはまた書きますが、心臓が揺さぶられました。
客席はほぼ満席。外人の反応が終始気になりましたが、オーディエンスアワードもとりました。


コクリコ坂からを抜いて一位だったのは内容的には当然だと思いますが、園子温がジブリという強大ブランドを倒したことが嬉しいね!
パーティーでの発表に喜ぶでんでん。

Copyright Kii Studios & Photography



なんだろう。
ここに集まった映画や人、昇華していくエネルギーみたいなものにとにかくやる気をかき立てられた4日間でした。
仕事的にはほんと大したこともできずに申し訳なかったんだけど、マイクとカメラを持ってそれこそ監督・役者・スタッフ・オーディエンスとこの映画祭に携わるすべての人と話す機会があったことが良かった。
撮影した映像たちはわたしをここに呼んでくれたMagnusがそのうち編集してくれると思うので、また載せます。空気が少しでも伝わるといいな。
映画が好きな人、映画をつくりたい人、フェスティバルを主催したい人、この先のロンドン生活できっと一緒になにかをつくり出せる人たちとのたくさんの出会いが、なにより大切な宝物になりました。
あしたからまた、頑張ります:)



2012-04-11

Dr Pepper, A Taste of Life



1月から始まったプロジェクトがようやく終わりましたーーー
約2ヶ月半かけた作品がやっっっっと終わるかと思うと、感慨深いです。
ほんと、やっっっっっっっっっっっとです笑。

この2ヶ月半で、本当にタフになりました。
元々タフじゃんて声が聞こえてくる気がしないでもないですが、自分の人生の中で最もサバイバル力が伸びた2ヶ月半でした。
これは決して目的ではないのですが笑、技術的なことよりなにより、「ロンドンで映像を撮ること」に対する力と自信がつきました。

一回目のミーティングの後、絶望的な状況に打ちひしがれ、革命を起こして自分の信念に基づいた制作をするか、学校のプロジェクトだと割り切って流れに乗っかり自主制作に専念するか、悩んで悩んでそして諦めかけた夜が本当に懐かしい。
同調してくれと言わんばかりに号泣するわたしの訴えに、しっかりしろって言ってくれた悠策くんの叱咤激励に心から感謝しています。
イタリア人とペルシャ人とルーマニア人とサウジアラビア人と日本人のわたしの5人で始めたプロジェクトは、いま放送してるコマーシャルパクろう!っていう方向に本当に最初進みかけたんです。
それは別にアイディアが浮かばないから苦渋の決断...という訳じゃなく、いまのコマーシャルかっこいいじゃーん!っていうノリです笑。
いま冷静になって考えればただのなんも考えてない集団なのですが、様子を伺っていたこの頃のわたしはこの子たちなりに何か考えがあるのかもしれないとか、コマーシャルは結構文化によってもアプローチが違うし、わたしの主張は間違ってるかもしれないとか思ったものです。ほんとかわいそうこの頃の自分。おつ。
そしてなにより、わたしはこの進みかけた話を引っくり返そうと思えるほど、自分の英語力に自信がなかった。
まあ当然いやいやオリジナルのめっちゃ面白いやつ作ればいいじゃんっていうところに落ち着いたわたしは、なぜこのまま進めたくないのかというお話と代案5案のストーリーボードを描いてなぜか自分のグループメンバー相手に大プレゼンをしました。
これがなければ、今頃は抜け殻のように生きていたと思います。
あの日の自分ありがとう。

いちばん最初に載っけたビデオが今回の作品です。
アイディア丸ごと使ってもらえました:)
彼ら好みのプロットを持っていったので、素晴らしい食いつきでした。結果みんな楽しんでくれたみたいで、わたしとしても満足です。
いい雰囲気の中で自分の作りたい作品をつくるっていう目的は達成されたと思います。
もはや面白いのか自分じゃわかんないんだけど笑、どうでしょう?
こっちのブラックコメディー的な感じで考えたつもりなんですが笑。
ドクターペッパーらしい作品がつくりたかったんです。
内容に関しては、普段自分一人じゃ絶対やらないことをやる機会になったので良かったです。と共に、ああ精進せねばと思いました笑。

結局プロジェクト通してプレゼン、プロポーザルの提出、ロケハン、料金交渉、役者集め、小道具集め、スケジューリング、機材準備などなど面倒なことは一切やらない外人たちなので、この時立ち上がらなければ、どうでもいい作品の雑用を一手にわたしが引き受けるはめになっていたということです。おっそろしい.......
ほんとにほんとに、仕事をしない仲間たちにも呆れたけど、せめて自分が本当に作りたいもののために頑張る2ヶ月半になって良かった。
こいつらまじでなんもしません笑。この話はただの愚痴になるのでやめます笑。
とりあえず、最初から最後までで全員集まったのはわたしが革命を起こしたミーティングだけ!待ち合わせしても2人来ればいい方だし、連絡もとれないことばかりでした。仕事を任せるなんて絶対絶対できません。
けどわたしは一通り経験できたので良かった。
臆せず役所に電話して撮影許可もらったり、交渉したりできるようになったことが地味に大きいです笑。英語に自信がついたわけじゃないけど、伝えたいことをうまく伝える術を学べた気がします。
これからのロンドンでの制作に大いに役立つでしょう。
なにも恐れずに一人で動けるようになったことが、このプロジェクト一番の収穫です。


信じられるのは自分だけです。
ずいぶん悲しい聞こえ方になりますが笑、ロンドンで成功している人の多くは結局その人自身が個として才能と行動力とやる気に満ち溢れているということです。
この街では本当に、待っていても何も起きない。
誰かがやってくれることなんて絶対にないと思わないと。
その誰かが自分なんだという自覚が不可欠です。
常に自分が全て請け負うんだという覚悟がないと、予想外の出来事にいちいち怯んでいたら全然前に進めないんです。ほんとに、ほんとにです。

日本に帰ったらまたそれはそれで違う困難に襲われるのだろうけど。
それでも人が時間通りに集まったり、お願いしたことがあがってきたり、そんな当たり前のことにとても幸せを感じて、感謝するようになると思います。
当たり前の積み重ねが信頼を生み、作品を育み、次へと繋がっていくのだと強く思います。
あー日本に帰りたい笑。
でもわたしは、もう少しここでやってやります。
これは当たり前のことをこなせるようになった小さな小さな一歩。
次は制作の面で、でっかい一歩を踏み出せるようにがんばりまーーーーーーす。

2012-04-04

Rotoscope

うおーつかの間の休息という感じです。
きょうはだらけると決めたのですが、あと1時間半でそのきょうも終わってしまいます。
切なし。いろいろと書きたいことはあるのですが、書くのが遅いので。
さくっとこないだまでやってたロトスコーピングの授業について書きたいと思います。

ロトスコーピングとは実写で撮影した被写体の動きをトレースして、アニメーションキャラクターの動きをよりリアルな人間に近づける技術です。
わたしもわかりきっているわけじゃないので、いろいろと間違ってたらごめんなさい。
いまではモーションキャプチャという、実際人間の関節にセンサーを付けて動作を解析・数値化する技法が発達しているので、格闘系・スポーツ系のゲームなんかは主にそっちが使われています。
が、ロトスコーピングの歴史は1919年に既に始まっているのです!びっくり!
当時のロトスコープは当然アナログで、1フレーム毎にトレースしていたようです。
わかりやすい画像があったので拝借。
デジタルでも果てしない作業なのに、全部手書きなんて死んじゃう。
開発者のマックス・フライシャーは1920年代、初期ディズニー唯一のライバル。
フライシャースタジオはロトスコープもさることながら、映画界がトーキーに移行し始める前に音声を付けたアニメーションをリリースしていたりと技術面でのパイオニア的存在だったように思えます。
彼らの代表作の一つが「Betty Boop」。



ディズニーの代表的な女の子キャラクターがミニーマウスだったように、それまでのアニメーションは女性の外見を忠実に描くことはなく、ベティちゃんのセクシーな見た目とダンスは当時とてもセンセーショナルだったようです。
彼女の柔らかい女性的なアニメーションはロトスコープあっての技。
音楽に合わせて踊るモデルを実写で撮影するので、音と動きも綺麗にシンクロしてますねー。
ちなみにベティは1934年にアメリカで導入されたヘイズ規制(商業映画の道徳規制)で露出を制限されたり、配給元のパラマウントからディズニーを模倣するよう指示されたり、その本来のキャラクターを喪失していかざるをえなくなったそう。
映画はいつの時代も不本意な敵に振り回されている感じがするよねえ。

まあ結局ロトスコープも世界的に認知されるようになったのは1937年の「白雪姫」から。さすが天下のディズニー!
アニメーションはまだ当時子ども向けの短い作品が多かったところを、ディズニー自身初の長編アニメーションに踏み切ったわけです。そしてそのほぼ全てがロトスコープを使ったトレース!果てしない〜!



おそらく当時も24fpsなのかな?83分で約12万枚くらい?ひゃっほー!
実写撮影の様子がこちら。



白雪姫の指の先まで神経がゆき通ったような動作はこのモデルから生まれているのね。
結局いいものをつくる近道なんてないということか〜と思っていたら、面白い記事を発見したので引用させて頂きます。

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〜〜〜「ロトスコープ」というものの考え方自身がその価値観をよく表している。
現実に存在しないものをリアルに見せようとする根性はSFXにも通じるアメリカ独特のものかもしれない。

これに対して日本のTVアニメは1秒間に8枚しか使えないリミテッドアニメだ。
ディズニーのアニメーションが1秒間に24枚なのと比べて、どうしてもカタカタカタカタと不自然な動きになる。動きをリアルに、とかロトスコープとか以前の問題だ。
もともと日本のTVアニメは、昔は「TVマンガ」と言われていた。少年誌に連載されているマンガをTVで動かします、が目的の作品だ。
当然、制作現場への注文も「リアル」よりもマンガの絵をそのイメージのまま動かすことに重点が置かれた。
マンガの絵はデッサンとは違う。たとえば、人間の顔は必ず斜め右か斜め左のいちばんかっこいい角度からかっこよくデフォルメして描く。決して中途半端な角度から描いたり、真正面から描いたりはしない。
そのかっこいい斜め右向きの顔から、斜め左向き顔までをできるだけ変にならないようにつなぐのがTVアニメの課題になった。
鉄腕アトムの角がどっちを向いても必ず二つ見えていて、決して重ならないのは有名な話だが、これも同じポリシーに基づいている。
日本のアニメはアメリカのように立体物を想定して、それを正確に動かそうとする方式とは正反対なのだ。
このアメリカと日本のアニメーションに対する考え方の差は、スローモーションで見ることによって、具体的にはっきりわかる。コマ送り、という家庭用ビデオの進歩がそれを可能にした。
たとえば、重いものを持ち上げるシーン。
アメリカのアニメーションなら、実際に人間が重いものを持つとき、どんなポーズをとっているのか、1/24秒ごとに把握する。
膝の角度と開き方の関係は?踵はどの位置まで持ち上がっているか?どの筋肉を使い、どれぐらい膨らむか?
ロトスコープまでしなくても、こういった解剖学的な正確さが重要になる。
それに比べ、日本のアニメは違う。
持ち上げようとするとすぐには持ち上がらない。この、持ち上げようとしたまま止まっている1秒ほどの描写が「重い」を表現している。そのあとゆっくり持ち上げる。途中で止めたりすると、いかにも重い感じがする。
アメリカのアニメーションがとにかく「動き」を表現するのに対し、日本アニメは「止め」で表現する。西洋の演劇が「バレエ」という動の文化に進化していくのに対し、日本の演劇は「能」という静の文化に進化していった。国民性とも言えるかもしれない。

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もちろん日本のアニメが近道してる!なんて絶対に思わないけど、見せ方の差は明らかだよね。おもしろいねえー。


最後にわたしが学校のエクササイズでちらっとつくったロトスコープのっけます。
わたしたちはアニメーションはつくらないから、マスキングして合成する練習。
ベティと白雪姫の後にこんなふざけたもんのっけてごめんなさい笑。
出演はおともだちのえしぇるちゃんです。
来週からミュージックビデオのプロジェクトが始まります。
学校外でもいくつかミュージックビデオをつくる予定。
えしぇるちゃんに不満を言うわけではないですが笑、ちゃんとした作品をつくる際には身体を使える人に出演してほしいね笑。
いよいよイギリスでダンサーの知り合いがほしくなってきた!日本ならいっぱいいるのになーあ。