2012-12-11

[FILM]希望の国

希望の国を観た。
この国に本当に希望なんてあるのか。
「一歩、一歩、」一歩どこへ向かえばいいのか。
絶望が果てしなく広がって、「愛があるから大丈夫」なんて思えなくなってしまった。
園子温はこの映画を見終わった日本人の心に何を残したかったのだろう。
直接的なエロさもグロさもないけど、希望の国は園子温作品の中で最も残酷に心を抉る作品だった。


更地を包み込むように積もる美しい雪がそこで起こった悲劇を覆い隠そうとしているようだと思った。
そのすぐ後に「いつまでもへこんでいても仕方ない!前を向いていきましょう!」という押し付けがましいセールスのようなトーンで根拠のない希望をまくしたてるキャスターのシーンを見て、現実で静かに確実に進行している問題を無理矢理過去の出来事にして覆い隠そうとしているのは他でもない日本人だと痛感する。
メディアも政治家も、何もできない国民も恥を知った方がいい。

わたしたちは目で見えるもの、わかりやすいものには大きく反応する。
特に日本人は批判に対する能力は長けている。総選挙関連の発言も批判が大半で、自身の信条を明言して進みたい方向を示すような発言は少ない。もっとも、それが難しいことだというのは肌で感じているけれど。
それでも批判能力に長けている日本人のくせに見えない放射能や溢れる情報に対応できないままなのは、なんて浅はかなんだろうと思わずにはいられない。
放射能が目に見えて、針のように空から絶え間なく降り注いでいたら正気ではいられないだろうに。それなのに何事もなかったかのように日常生活を送るわたしたちは、想像力の欠如と事なかれ主義の究極体なのではないかと思う。

「これは見えない戦争なの。弾もミサイルも見えないけど、そこいらじゅう飛び交っているの、見えない弾が!」

大切な人が一人でもいる人なら、これが最も正常な反応なのかもしれない。
お子を授かった今、わたしは福島には住めないと思うし正直東京がどんだけ安心なのかも怪しいもんだと思う。
日本は大好きだけど、逃げられるならわたしはこの国から逃げたい。



一方で、神楽坂恵演じるいずみは授かった赤ちゃんの命を守るため、目に見えるものに頼っていく。 ガイガーで数値を測り、ビニールで部屋を覆い、宇宙服みたいな防具で外気から身を守る。
先述の通り、大切な人がいる人ならこれが正常な反応なんだろうなと思う。
ただそれは本当に悲しい程微力で、一時的な抵抗でしかない。最後のシーンでは、響き渡るガイガーの音になんて脆いシェルターにすがっているんだろうと心が痛くなる。

国も、個人もこうしてその場しのぎの選択を積み重ねてきた結果がいまです。
わかりやすいものに手を伸ばして安易な安心を得ようとしてきたことは、日本人全員が背負うべき罪だと思います。
たくさんの政党が乱立していて、難しい言葉ばかり並べられていて、特に原発の問題に関しては果たして何人の政治家が理解しきっているのか疑わしい。そうなったらさいこーだよねと思うような綺麗なことばかりを唱える政治家もいるけど、実現できるのかはかなり怪しい。専門家ですら複数論議を展開する問題に対してわたしたちがどこまで正しく消化できるのかは、正直厳しいものがあると思います。
以前にFBでシェアしたムヒカ大統領のスピーチをもう一度シェアします。

リオ会議でもっとも衝撃的なスピーチ:ムヒカ大統領のスピーチ

力が及ばないにしても大切なのはその場限りではなく、根本的に問題と対峙すること。
自分の大切な人が安心して生きていられる世の中とはなんなのかと個々人が考えることだと思います。
「愛情や人間関係、子どもを育てること、友達を持つこと、そして必要最低限のものを持つこと。」
わたしは景気が悪くても幸せな子どもを育てることはできると思うけど、放射能が降り注ぐ中で幸せな子どもを育てられるとは思えない。
抑える能力がないのならば、使うべきではない。と当たり前のことを声を大にして言いたい。当たり前のことなのに、忘れ去られていっていると感じるからです。
日本人の心は疲弊していると感じます。
もちろん全ての問題を解決してくれる政党がいたら超ラッキーだけど、そんな政党はいまのとこないように思えます。
人様の決断にどうこう言う権利はないけど、そういう状況で「景気回復」を最も重視する国民が多い現状がわたしは悲しい。
もちろんそれぞれの事情があることは確かなので、わたしが正しいとは決して思ってないけど、希望の国を観て全員が根本的な問題の解決を図るための自分の信条について考えるべきだと思います。
希望があるとしたら、そうした行動の先。
真に豊かに生きることができていると感じられた時だと思います。
ムヒカ大統領のスピーチも読んだらいいと思います。
ついでにこのぞっとする画像を。。。



長くなりましたが、今週の日曜日は選挙にいきましょう!ということで。
わたし選挙権ないけどー!

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希望の国
director:園子温
writer:園子温
cast:夏八木勲、大谷直子、村上淳、神楽坂恵
country:日本
http://www.kibounokuni.jp
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